冊子vol.5 レッド・パージの再検討 レッド・パージの目撃者Kさんの体験を通して

本日、『猫が星見たー歴史旅行』vol.5を刊行しました。

 

テーマは「レッド・パージの再検討」です。

 レッド・パージの目撃者であったKさんの体験を通してレッド・パージとはどのようなものだったのか検討しました。

 

 今号をご希望の方はお手数ですが、下記までご連絡くださいますようお願いいたします。折り返しご連絡させていただきます。

 なお、1部 500円とさせていただきます。お支払い方法などは個別にご連絡いたします。どうぞよろしくお願いいたします。

nishiogiminami3@yahoo.co.jp

 

 

昨年は、下記にあるKさんのほかにも、女性1人、男性1人の計3人、85歳以上の方からお話をお聞きしたのですが、みなさん、戦争への冷徹なまなざしを共通してお持ちだったのを感じました。

だから、どうだとすぐには語れないんですが、昨年、たてつづけにこの世代の方々と交流できたことは、わたしにとって大きな意味を持ったと思います。

 

以下は、今号の冒頭の一部です。

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⌘レッド・パージの再検討をしようと思うまで 

 この数年のわたしの関心は朝鮮戦争と日本社会の関係にあり、その考察は本冊子(『猫が星見たー歴史旅行』vol.2,3,4)でも著してきた。そのすべてを読んでくださった方のお一人にKさんという方がいらっしゃる。1930年生まれの90歳の男性だ。15年ほど前に地域の学習会で出会ってからおつきあいさせていただき、この5年ほどで特に交流を深めるようになった。

 朝鮮戦争と日本社会の関係を考察していくなかで、ほぼ同じ時期に起きたレッド・パージのことがわたしはよくわからないでいた。レッド・パージとは占領下の194951年にかけて起きた日本の近現代史上最大の政治・思想弾圧事件で、規模の点では世界でもほとんど例を見ないものだといわれている。だがそれほどの事態であったにもかかわらず、現在では多くの人に知られているように思えない。当時のこともわたしにはよくわからないし、それがどうしてきちんと継承されてこなかったのかもはっきりとしない。

 レッド・パージという用語だけは印象的だが、それが前述のような大規模な痛みを伴う出来事だったことはきちんと継承されていないことに気づく中で、当時の日本社会の人びとがレッド・パージをどのように受け止めていたのかを知りたいと思ったし、逆に、それがわからなければ当時の日本社会のことがきちんと見えてこないのではないかと思うようになっていった。

 (中略)

 1950年前後に起きたレッド・パージというのは、1945年8月に始まった戦後日本が早くも迎えた大きな転換点である。その意味で、レッド・パージを見つめ直すことには意義があると思うのだが、前述のように、実際には、当事者の方々やその周囲の人たち以外からレッド・パージが正面から振り返られることはほとんど皆無に等しい。

 そのような状況をふまえたとき、戦後日本の転換の始まりの再検討という位置付けでレッド・パージを捉え直したいと思ったというのがわたしの問題意識であり本稿の目的でもある。「民主化、非軍事化」という初期占領方針が冷戦の始まりを背景に変節し始める状況を、当時の人びとはどのように見ていたのか、あるいはどのようにそこに関わりを持ったのか。そのような観点で、レッド・パージを再検討してみたいと思うのである。レッド・パージへの初発の疑問を受け止めてくださったKさんとのやりとりの中でこの問題関心は次第に明確なものになっていった。